シルピンスキーのガスケット
今までとは違った方法で、フラクタルを構成してみます。
3つのテレビ、もしくはシルピンスキーのガスケット
ビデオカメラをテレビに向けると?
ビデオカメラをテレビにつないで、そのカメラでテレビを撮ると面白いことが起こります。
テレビにはテレビが映っているはずです。でも、そのテレビにはテレビが映っています。さらに、そのテレビの中のテレビにはテレビが映ってて、そのテレビの中のテレビの中のテレビにはテレビが映っています。さらに分かりにくまとめると、テレビの中のテレビの中のテレビの中のテレビの中のテレビの中の・・・(省略)・・・テレビには、テレビが映ってることになります。
一部を拡大すると、それ自身になっているので、これはフラクタルになります。 言葉だけではイメージしにくいので、実際にやって見ましょう。
と、思ったのですが、手元にビデオカメラがないので、ごまかしました。画面ははめ込みです。 (ブラウン管のテレビを、ビデオカメラで撮った場合、別の理由でフラクタルになりません。 ドラえもんのタイムマシンっぽい、揺らめく映像が映ったりします。 じっと見つめていると催眠状態になりそうです。多分、液晶ならうまくいくでしょう。)
重要なのは、これが再帰的なフラクタルになっているということです。 いままでは、線分を折れ線で置き換えるという操作しかしませんでしたが、 このように面を面で置き換えることによっても、フラクタルが得られるのです。 この方法で、フラクタルを構成することを考えてみましょう。
もうちょっと複雑に
上の例では単純すぎて、それほど面白くありません。テレビの台数を3台に増やしてもっと複雑にします。 テレビはfig.2のように配置します。ただし、絵を描くのが大変なので、このように模式化して描くことにします。 ここで、黒い正方形はテレビのあるところを、白い正方形はテレビのないところをを表わしています。 このように、表現しても本質は失われませんよね。
さて、これをビデオカメラで撮るとどうなるでしょう?いっぺんに考えるのは難しいので、まずはテレビの中のテレビがどうなるか調べてみます。先ほどと同様に模式化するとfig.3のようになります。
3台のテレビの中にはそれぞれ3台の小テレビがあり、さらに各テレビの右上には小テレビがないので、 このようになるのです。では、テレビの中のテレビの中のテレビはどうでしょう?
まぁ、要するに黒い正方形を、fig.2と置き換えていけば良いわけです。 つまり、これは面を面で置き換える操作です。これを再帰的に無限繰り返せば、 3つのテレビをビデオカメラで撮ったらどうなるかが分かります。
シルピンスキーのガスケット
やってみましょう。しかし、例のごとく、無限回の操作は現実的ではないので、何回かの操作で打ち切ります。 とりあえず7回ほどやってみます。するとこんな感じになります。
ようやく、フラクタルっぽい感じになってきました。直角二等辺三角形が不思議に組み合わさった図形になります。しかし、このままだと見栄えが良くないので、普通はさらに三角形が正三角形になるように歪ませます。 こうして出来上がったフラクタルはシルピンスキーのガスケットと呼ばれています。 今までのフラクタルとは違い、面を面に置き換える操作により生成されたフラクタルです。
次元は?
次元がどの位か気になるところです。求めてみましょう。
今まで、線を線で置き換えるタイプのフラクタルでしか、次元を求めませんでしたが、やることは一緒です。 使う公式は、不思議な次元のeq.2です。 fig.6からわかるように、2倍に拡大すれば、面積は3倍になります。したがって次元Nは、
となります。
シルピンスキー曲線
実は、大変不思議なことに、シルピンスキーのガスケットはいままでのジェネレーターを使った方法でも、 作ることができるのです。つまり、おなじみの線を線で置き換える操作の繰り返しでです。
| ジェネレーター | ベース | フラクタル |
|---|---|---|
![]() |
![]() |
注意:面を面で置き換えるフラクタルの全てが、ジェネレーターによっても作れるわけではありません。
どのように作られていくかを見るために、いろいろな段階のシルピンスキー曲線 を見てみましょう。
次元は?
またしても、次元を求めてみましょう。fig.8をにらんでいると、どうやら2倍に拡大すると、 長さは3倍になることが分かります。というと式は、上のeq.1とまったく同じものになります。 したがって、次元も同じく約1.585になります。
シルピンスキーのガスケット=シルピンスキー曲線
ジェネレーターを使って、先ほどのテレビの中のテレビと同じものを作ることができました! そう、面から作るシルピンスキーのガスケットと、 線から作るシルピンスキー曲線は同じものだったのです。 (見た目と次元が同じ様だからといって、本当に同じだとは言い切れません。 そのためには証明が必要ですが、省略します。)
線を線で置き換える操作を有限回繰り返しても、得られる図形は線に、また、面を面で置き換える有限回の操作では、得られる図形は面になるはずです。しかし、これらの操作を無限回繰り返して得られたフラクタルは同じものでした。 不思議です。
この無限回ということをに魔力が込められていたのです。 線を線で無限回置き換えて得られる図形は1次元だとは限りません。 次元(もちろんハウスドルフ次元です)は置き換え方によって、 大きくなったり小さくなったりします。面を面で置き換える場合も同じです。
作りかけのシルピンスキーのガスケットは2次元で、作りかけのシルピンスキー曲線は1次元です。 完成したら、これらが同じものになるというのですから、直感的に、シルピンスキーのガスケット(もしくは曲線)は1次元と2次元の狭間に存在するということが納得できると思います。 (もちろん、計算上もそうなっていますよね。)
パスカルの三角形のmod2
シルピンスキーのガスケットを生成する方法はまだあります。 それは、パスカルの三角形を利用する方法で、おそらく今までの方法の中で、一番普通の方法です。
パスカルの三角形?
名前はともかく、どこかで見かけたことはあると思います。こんなのです。
| 1 | |||||||
| 1 | 1 | ||||||
| 1 | 2 | 1 | |||||
| 1 | 3 | 3 | 1 | ||||
| 1 | 4 | 6 | 4 | 1 | |||
| 1 | 5 | 10 | 10 | 5 | 1 | ||
| 1 | 6 | 15 | 20 | 15 | 6 | 1 | |
| 1 | 7 | 21 | 35 | 35 | 21 | 7 | 1 |
(もっと見栄え良く、下のように正三角形で書くことが多いですが、どっちでも同じです。 正三角形は表示しにくいで、直角二等辺三角形型で書ことのにします。)

この三角形は次のような規則で、作られています。
- n行目には数字をn個書く
- 一番右端、一番左端は常に1にする
- それ以外の場所では、真上と左上の数字の和にする
これはちょうど、2項定理の展開係数になっています。 つまり、p行目の左からq番目にくる数はpCqです。
ここでは、8行目までしか書いていませんが、本当は当然どこまでも無限に続きます。
mod2をとってみる
さて、このパスカルの三角形の各数字を、それを2で割った余りで置き換えます。 (つまり、偶数だったところを0、奇数だったところを1に書き直します。) この操作のことをmod2をとるなどといいます。
パスカルの三角形のmod2はこのようになります。
| 1 | |||||||
| 1 | 1 | ||||||
| 1 | 0 | 1 | |||||
| 1 | 1 | 1 | 1 | ||||
| 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | |||
| 1 | 1 | 0 | 0 | 1 | 1 | ||
| 1 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 1 | |
| 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
これだけだと、規則性がみえにくいかも知れません。 分かりやすくするために、1のマスを黒く、0のマスを白く塗りつぶしてみます。 するとどうでしょう?
なんとも、奇妙なことに(作りかけの) シルピンスキーのガスケットになりました。 今は8行目までしか書いていないので作りかけですが、無限行目まで書いた パスカルの正三角形のmod2はまさに、シルピンスキーのガスケットそのものです。
おまけ
mod2ではなくて、mod3などにしてみても、面白いフラクタルが出来上がります。 この場合は塗りわけに3色でも良いのですが、割り切れるか割り切れないかで分類して、2色にすると良いです。 シルピンスキーに似たまた別のフラクタルが得られます。 3ではなくて4なら?100なら?2005なら?と、いろいろ試してみると面白いです。 プログラムを組まないでも、Excelで十分遊べます。 (mod666のものをパスカルの獣などと呼ぶことがあります。 正式名称かどうか知りませんけど)
modの中が素数の時と合成数の時で得られる画像がだいぶ変わりますが、何故でしょう? 三角形を見ただけでmodが何だったか当てることはできますか? 違うmodで同じ三角形を得ることはできますか? modを変えていくと次元はどう変わるのでしょう? 対応するジェネレーターを見つける方法がありますか? 等々、考えてみる価値のある問題には事欠きません。
3つの方法、もしくはシルピンスキーのガスケット
シルピンスキーのガスケットには少なくとも3つの違う作り方がありました。 当然、シルピンスキーだけが特別、というわけではありません。 (そういえば、ドラゴン曲線も2通りの方法で作れました。) ただひとつの方法でしかたどり着けない所というのはあんまりありません。 数学では、ありとあらゆることが絡まりあい、関係しあっているのですから。
数学に限らずそうなのだと思います。1つ方法にこだわらず、いろいろな方法を探せば、 何か根底に流れる関係みたいなものが、見えてくるかも知れません。 視野を広げることが大切だなぁ、と思う今日この頃です。

(eq.1)







