正多角形によるタイリング
まずは、一番簡単な正多角形によるタイリングです。 たった一種類の正多角形で平面を埋め尽くすことを考えてみます。
すぐに分かるのが正方形ですね。(つまり、お風呂場です。) これなら、隙間なく平面を埋め尽くすことができます。 他に、正何角形なら平気でしょうか?可能なものを全て見つけ出しましょう。
このとき、1つ1つ確かめていくのは不可能な上に、賢くありません。 確かに、この方法でもいくつか可能な正多角形が見つかるでしょう。 しかし、正多角形なんていくらでもあるので、 この方法では「これで全てだ!」と言いきることができまないのです。 第一、スマートではありません。もっと、違う方法を考えてみます。
正多角形の性質
といいつつも、まずはちょっと正多角形の性質について書いておきましょう。
定義
特に、定義するほどのことでもありませんが、念のため。 全ての辺の長さが等しく、全ての角が等しい多角形を正多角形と呼びます。
種類
3以上のどんな自然数nに対しても、正n角形が存在します。 つまり、正3角形、正4角形、正5角形、・・・、といくらでもあるのです。
当たり前じゃないか!と思うかもしれませんが、 例えば正多角形の3次元版である正多面体ではそうはならないのです。 正4面体はありますが、正5面体は存在ません。無限に存在できるのは正多角形だけなのです。
(蛇足ですが、3次元つまり正多面体は5種類しかありません。4次元つまり正多胞体は6種類しかありません。5次元以上つまりn次元正多胞体は3種類しかありません。 無限あるのは2次元だけなのです。なんて不思議な!)
内角
正p角形の内角tは次の公式によって与えられます。
結構、知られている公式ですが証明しておきましょう。
三角形の内角の和
まず、辺BCに平行で頂点Aを通る直線を引きます。 平行線の錯角は等しいことから、辺AB、辺ACと直線がなす角がそれぞれb、cであることが分かります。
直線の角度は180度ですから、a+b+c、つまり三角形の内角の和が180度であることが分かりました。
p角形の内角の和
p角形の頂点をそれぞれ、A1、A2、A3、・・・、Ap と呼ぶことにします。
さて、頂点A1から始まる対角線を引けるだけ引いてしまいます。 A1A2とA1Apは対角線にならないことに気をつければ、 引けるのはA1A3、A1A4、・・・、A1Ap-1の (p-3)本だと分かります。
すると、p角形は(p-3)本の対角線により(p-2)個の三角形に分割されました。 それぞれの三角形の内角の和は先ほど証明したように180度なので、 p角形の内角の和はその(p-2)倍である180(p-2)度であることが分かります。
正p角形の内角
正p角形ならば、定義により全ての内角が等しいはずです。 内角はp個あり、その和は180(p-2)度であることが分かっていますから、正p角形の内角tは、
(eq.2)となります。これでようやくeq.1が証明されました。
タイリング
横道が長かったですが、ようやくタイリングです。 タイリングに必要な条件を考えてみます。
1つの頂点に正p角形がn個集まっているとしましょう。 集まっている角の角度を合計したら360度になっていなくてはなりません。 360未満では平面を覆えていませんし、360度より大きくては正多角形が重なってしまいます。
さて、今言ったことを式で表すと、
となります。内角×集まっている数は360度って言う当然の式です。 これを、見やすくするために変形します。
と、大部きれいな形になりました。が、これ以上進められません。 今分からないものはpとnの2つあるのです。 分からないものが2つあるときは、式が2つないといけないというのが常識でした。 そうすると、この式は解けず、何の意味もないことになってしまいます。 しかし、今はpとnには強力な制約がかかっているので、うまい具合に解けてしまうのです。
まず、pは3以上の自然数です。これは、上の正多角形の性質のところですでに述べました。 また、nも自然数でしょう。-2個とか4.7個集まっているとかは意味が分かりません。 さらに強くnは3以上の自然数と言い切りましょう。 1個が集まって頂点を作るというのはありえませんし、2個集まってできるものは頂点ではなく辺ですから。
そういう視点で、もう1度eq.4を見てみましょう。 pとnにかかる制約により、(p-2)と(n-2)は自然数であることが分かります。 その積が4であるといっているのです。 そんな自然数の組み合わせは「1と4」、「2と2」、「4と1」の3種類しかありません。 つまり、
(eq.5)です。ふぅ。頂点に「正三角形を6つ」または「正方形を4つ」または「正六角形を3つ」を集めれば、 集まっている角の角度の合計が360度になることが分かりました。 それ以外の組み合わせではeq.3を満たさず、タイリングに失敗します。
ここで注意!「先ほどの3組ならタイリングができる」 ってことを証明したわけではありません。証明できたのは、 「その3組以外では失敗する」、「タイリングできる可能性があるのは精々その3組のみ」 ということです。この違いは分かりにくいですが、非常に重要な違いです。 (この混乱は必要条件と十分条件を同一視しているのが原因です。)
さて、問題は「先ほどの3組ならタイリングができる」のか?です。 1番最初に「1つ1つ確かめていくのは不可能な上に、無様だ」と書きました。 あ、「無様」じゃなくて「賢くない」という3倍くらい上品な言葉だった・・・。 まぁ、いいや。 しかしです。今やもう標的は残すとこと3つだけなのです。1つ1つ確かめてみましょう。 もしこれでうまくいけば、タイリングができるといくことになります。 それで、もしうまくいかなかったら、タイリングができないのです。単純明快です。
しらみつぶし
と言うのです。1つ1つ調べていくことを。やってみましょう。
まずは頂点に正三角形が6つ集まった場合です。あ、待ってください。 こんなのをいちいち日本語で書くのは面倒ですね。簡単に表記できるようにしてしまいましょう。 それぞれの頂点に正三角形が6つ集まったタイリングのことを 3-3-3-3-3-3と書くことにしましょう。 正方形が4つなら4-4-4-4、正六角形が3つなら6-6-6です。
(正三角形が6つなんだから[3, 6]とかの方が分かりやすいのではないのか? という気もします。この表記方法はシュレーフリの記号と呼ばれています。 これは、便利だし重要な記号ですが、後々のことを考えて今は使いません。)
では、気を取り直して。3-3-3-3-3-3、4-4-4-4、6-6-6の3つの候補を全て作ってみましょう。
3-3-3-3-3-3
4-4-4-4
6-6-6
全部、うまくタイリングになっていますね。
3つのタイリング
上の3つのタイリングは可能なことが分かりました。 そして、可能性があるのはこの3つだけだったので、全ての可能なタイリングを網羅できたことになります。 めでたし、めでたしです。
しかしまぁ、上の3つ当たり前すぎて、あんまり面白いタイリングではありませんね。 単純すぎます。仕様がないから、カラフルに塗ってみましょうか。



正多角形を一種類しか使わなかったのがいけなかったみたいです。何種類でも使ってよいことにしましょうか? そうしたら、いくらでも出てきそうな気がしませんか?どうなるかやってみるまで分かりません。 というわけで次のページではこの問題を考えてみましょう。

(eq.1)
(eq.3)
(eq.4)