複数の正多角形によるタイリング(2)
複数の正多角形によるタイリング(1)では、 「ある頂点のに集まる角の角度の合計は360度にならなくてはいけない」という条件を使って、 候補を18個にしぼりました。しかし、この候補でタイリングが可能かどうかはまだ分かっていません。 というわけで、実際にそれぞれタイリングが可能かどうか調べましょう。
一番、分かりやすい方法は、実際に並べてみることです。 それで、タイリングがうまくったらうまくいきますし、いかなかったらいかないのです。
それでは、18通り全部調べていきます。
頂点の周りに3つ角が集まる場合
前ページで求めた通り、候補は
- 5-5-10
- 4-5-20
- 4-6-12
- 4-8-8
- 3-7-42
- 3-8-24
- 3-9-18
- 3-10-15
- 3-12-12
の9通りです。
5-5-10
途中までタイリングしてみるとこのようになります。
最初から、つまずいてしまいました。 A、B、Cの周りでは確かに5-5-10となっていて、うまくいっています。 さて、Dで5-5-10となるためには、「あ」には正五角形を配置しなくてはいけません。 しかしです、Eでうまくいくためには、「あ」は正十角形でなくてはいけないのです!
これは、どうしようもありません。「あ」を正五角形にしても、正十角形にしても、 EかDの周りで5-5-10になりません。 というわけで、5-5-10というタイリングはないという結論になります。
何故、うまくいかなかったのか
この調子で、1つ1つ調べていっても良いのですが、それはあまりに非効率的です。 5-5-10では何故うまくいかなかったのかを分析して見ましょう。 理由が分かれば、同じ性質を持つ候補を調べずとも消せるかもしれないからです。
模式的に考えてみる
先ほどのケースでは正5角形の周りで、不都合が起きたのでした。 まずは、状況を分かりやすく絵にしてみましょう。
これは、a=5の場合のa-b-cというタイリングです。 Dの周りがa-b-cとなるためには、「あ」はbでなくてはいけません。 一方、Eの周りを考えれば、「あ」はcでなくてはいけないのです。
それでは、頂点の周りに3つ集めるタイリングは不可能なのでしょうか?そんなことはありません。 先ほどはaが奇数だったので問題が発生したのです。aが偶数、例えば4とかだったら困りません。
さらに、aが奇数の場合でも問題を回避することができます。 それはbとcが等しいです。
この場合、正a角形の頂点の周り全てでa-b-bとなっていて、うまくいっています。
というわけで、a-b-cというタイリングが可能であるためには、 a、b、cが全て偶数もしくはaが奇数でb=cである必要があります。 この条件を満たしているからといって、タイリング可能だとは限りませんが、 少なくともこの条件を満たしていないものは確実に、タイリングに失敗します。
一番最初に確かめた5-5-10はこんな理由でタイリングに失敗したのでした。
生き残る候補
さて、今考えた条件を残り8通りの候補に適用してみます。すると、
- 4-5-20
- 3-7-42
- 3-8-24
- 3-9-18
- 3-10-15
は、だめだということが分かります。この条件により調べる対象がたいぶ減りました。残っているのは、
- 4-6-12
- 4-8-8
- 3-12-12
のたった3つです。例のごとく1つ1つ調べる必要があります。
4-6-12、4-8-8、3-12-12
並べてみると、3つともうまくタイリングできることが分かります。
頂点の周りに3つ角が集まる場合は以上の3つのみが可能です。 意外とできないものですね。
頂点の周りに5つ角が集まる場合
では、次に進みます。話の関係上、4つではなく、5つ集まる方を先に調べます。 調べる対象は次の3通りです。
- 3-3-3-3-6
- 3-3-3-4-4
- 3-3-4-3-4
実際に並べてみると、どのタイリングも可能であることが分かります。
3-3-3-3-6
3-3-3-4-4
3-3-4-3-4
困った思いつき
3-3-3-4-4のタイリングに似ているのを見たことありませんか? これは、3-3-3-3-3-3と4-4-4-4が交互に来ているだけですよね。
ということは、計算しなくても次のようなタイリングが可能だということが分かります。
このタイリングはa-b-c-・・・の表記方法では表せません。 なぜなら、頂点の周りは3-3-3-3-4-4だったり、 4-4-4-4だったり色々するのですから。 前ページで18通りの候補をあげ、 これ以外は確実に失敗するといっていたのにもかかわらず、 候補にないタイリングができてしまいました・・・。
しかも、fig.10で正方形の層の厚さを変化させることによって、 いくらでも新しいタイリングができてしまいます。 よって、可能なタイリングの個数は無限個ある。終わり。
だと、あまりに面白くありません。 この種の規則性に乏しいタイリングはあまり綺麗でなありませんし、今までやった計算が全て無駄になります。 どうして、こんな困ったことが起きてしまったのでしょうか? それは、暗黙のうちにa-b-c-・・・で表せるタイリングしか考えていなかったからなのです。
だから、今後はa-b-c-・・・で表せるタイリングのみを、 複数の正多角形によるタイリングとしてしまいましょう。
タイリングをa-b-c-・・・と表すことにより、 いくつか暗黙のうちに仮定してしまったことがあるのです。 本当は一番最初に説明すべきだったのかもしれませんが、話が分かりにくくなるので後回しにしてしまいました。 暗黙のうちに仮定してしまったものは、2つあります。それは、
- どの頂点の周りの環境も同じでなくてならない。
- 頂点と辺はぶつかってはいけない。
です。ちょっと解説します。
どの頂点の周りの環境も同じでなくてならない。
これは、上で説明したことです。例えば、ある頂点の周りが3-3-3-4-4で、 別の頂点の周りが4-4-4-4であることを許しません。
頂点と辺はぶつかってはいけない
これによりレンガ風のタイルは禁止されます。 もし、この条件がなかったら上下でずらす量を少しずつ変えることにより、 新しいタイリングがいくらでも可能になってしまいます。
また、入れ子状のタイリングも禁止されます。
これらの条件がなかったら、いくらでも乱雑なタイリングが可能となってしまうのです。 というわけで、これらの制限をつけることはもっともなことだと思います。 これらの制限をつけたタイリングのことを、アルキメデスの平面充填形といいます。
頂点の周りに4つ角が集まる場合
気を取り直して、4つの場合です。調べるべき候補は、
- 3-4-4-6
- 3-4-6-4
- 3-3-4-12
- 3-4-3-12
- 3-3-6-6
- 3-6-3-6
の6通りです。例のごとく1つずつ調べていきます。
3-4-4-6
途中までタイリングしてみるとこのようになります。
うまくいきません。「あ」の位置に正六角形を配置すれば平面を覆うことができますが、 そうするとCの周りでは3-4-6-4となってしまいます。 先ほど、このように頂点周りの環境に違うものが混じるのを禁止しました。 したがって、「あ」に正六角形を配置することを認めるわけにはいきません。
したがって、3-4-4-6というタイリングは不可能、という結論になります。
なぜ、失敗したか
頂点の周りに3つのときも、似たシチュエーションで失敗しましたね。 今度も何故失敗したか考えてみましょう。 転んでもたたでは起き上がらない、みたいな精神です。(少し違う)
というのが、今回のケースの模式図になります。 aが偶数の時は問題がなくて、奇数の時に問題があるというところまで、 頂点の周りに3つの場合と一緒です。
ひたすら同様に考えて、a-b-c-dというタイリングが可能であるためには、 a、b、c、dが全て偶数もしくはaが奇数でb=dである必要があります。 そして例のごとく、この条件を満たしているからといって、タイリング可能だとは限りませんが、 少なくともこの条件を満たしていないものは確実に、タイリングに失敗するということに注意です。
生き残る候補
さて、同様にこの条件を残り5通りの候補に適用してみます。すると、
- 3-3-4-12
- 3-4-3-12
- 3-3-6-6
は、だめだということが分かります。条件を満たすものは、
- 3-4-6-4
- 3-6-3-6
の2通りだけです。実際に並べてみると、両方ともタイリングできることが分かります。
3-4-6-4、3-6-3-6
8通りのタイリング
以上で18通りの候補全部を調べつくしました。そのうちタイリングが可能だったものは
- 4-6-12
- 4-8-8
- 3-12-12
- 3-4-6-4
- 3-6-3-6
- 3-3-3-3-6
- 3-3-3-4-4
- 3-3-4-3-4
の8通りだけで、それ以外はありません。 3-3-4-3-4なんかは、ちょっと思いつかない複雑なタイリングだと思います。 じっと見ていると、いろいろな模様が浮かんできます。塗り絵にしたら面白いかもしれません。

